shapelism  花田設計事務所

秋田市の有限会社花田設計事務所が日常や「ものづくり」の記録をしています。

中央自動車道の笹子トンネルにて発生した天井崩落事故の犠牲者及び関係者の皆様にお悔やみ申し上げます。

あんなモンが天井材に使われている必要があるのか?とか思う気持ちは変わりませんが同タイプのトンネルは沢山あって緊急に点検調査が行われたそうで今後のリニューアル等での構造変更等に期待したいですね。

現在日本のインフラの維持保全修繕費用にはとりあえずの所でも確か300兆円位掛かるのではなかったでしょうか?
ハッキリ言って想像が出来ません。

お客さんの3,000万円の予算ですら数字として認識していてもその金額の重さを把握しながら・・・というのは非常に観念的で嘘くさく、逆に観念的で客観的だからこそ大胆に調整したり出来る部分でもある訳です。
お金持ちな訳でも無いですし、重さは理解していても加重配分や感情の違いまでもを完全に理解してしまったら私達の仕事は仕事ではなくなり、恐らくは前に進む事すらままならない状況になってしまうでしょうし、そんな設計屋さんは要らないでしょう。

シビアで冷静な判断が出来る施主の代理人と言う立場でいる事。そしてそういう人間がバックアップしている事が如何に大切かは今までも何回も書いていますのでまぁ省略w

とにかく私も300兆円というのがどんな金なのかは良く分かりません。でもスケールを住宅位に縮小すると多少、その仕組みが見えてきます。


現在日本の国家予算が100兆円に迫ろうとしています。金掛けすぎだとは思いますがまぁそれはちょっと置いといて国家予算3年分を維持修繕費用だけに振り向けなければ現在のインフラを維持していく事すらままならない訳です。戦後、東京オリンピックを起点として飛躍的な整備・発展をしたのでたったの4、50年でここまで来てしまった。右肩上がりの成長がそれを後押しした。

たぶん他に例の無い事態でしょう?コンクリート構造物は正しく維持保全されていれば100年位は使える人工の石ですが冠に「正しく」と言う言葉が付きます。その「正しく」が300兆円に膨らんでしまった。

予算の無駄遣いなんて出来ませんしインフラ拡充の公共投資も控えていかなければいけない。というのはコンクリートから人へ的な抽象的な話ではありません。それだけ私達の生活が拡充し贅沢になってしまったというロジックに基づいている訳です。


家だってそうです。今、家を持とうとする皆さんの関心事はデザインはもちろんですがローランニングコストだったり省エネだったりします。悲しいかな古い家はその辺が高上がりになってしまう。というか時代の流れでそうなってしまった。これが今のインフラの姿ですね。

家の価値には見た目や住み易さだってありますが技術的に刷新されていっている部分を価値と見る時代になりました。道路やトンネルと違って建て替えのサイクルも早いですし、社会にあふれる数も膨大で進化は日進月歩。恐らくは間取りや仕上げ程ではないにしても家を構成する重要な要素です。私達が安直なリフォームを嫌う理由の99%がここに集約されている。

非常にアンビバレンツですがリフォームこそ表面上の刷新ではなく、性能値も現代風にアップトゥデイトされなければなりません。そしてそれは安直な二重窓への交換や節水型機器への交換で実現するモノではない訳です。
あれは業界の都合ですから・・・そしてそれには安直じゃない分だけお金が掛かります。やればやったでお金が掛かる訳ですがそれを生き金にするか死に金にするかを考えるに安直なリフォーム希望には応じられないという訳です。


さて話が一寸ずれましたが今は歳入が支出を下回り、国の財務上の赤字は増え続けています。加えてデフレですので物が動かない状況です。そんな中でも維持保全は待ったなしですし、コレを支出に組み入れていかなければインフラはいずれ壊れてしまう。今はお金が無いのにお金が掛かるシステムが完成されてしまい、しかもお金を取る側は必死にそれを守ろうという状態です。原子力ムラなんてその最たるモノ。アレを新設していく事でなければ儲からない人がいる。
廃炉に向かえば電力会社はその道で生きていく事が出来ますがその人達は儲からなくなってしまう。その力が強いから抵抗も強い。そんな感じでしょう。変化はその段階で特定の個人を不幸にしてしまうかもしれない。でも変わらなければ破滅が待っている?かもしれない。

間違いない事はインフラはとても便利でしょうが確実に経済的には過剰投資になってきているという事と今までのような経済発展ベースでは存在できないという事ですよね。でも土建屋さんだってチマチマした改修工事では利益の確保が難しいので大型の公共工事を発注して欲しいと思っている。どちら側にいるか?によって考え方なんてどっちにだって行けてしまうのが今の状況。
そしてその弊害がハコモノを嫌って挙句維持保全費まで削ってしまった現在な訳です。今回のトンネルだって福島の防潮堤だってそんな無言の圧力と慢心が原因。ヒューマンエラーなんですね。

ハコモノ行政なんていう言葉が跋扈してしばらくになりますが現実的には必要な投資もある。私達ユーザーが盲目的にそれを嫌悪してしまう事も要因になりうる訳です。正しくみて正しくジャッジしていく。ユーザー側の成長が必要な時期に来ているのを強く感じました。

因みに10年も前から私達の業界では話されていた事です。でも経済の力関係の中で黙殺されてきた歴史です。あんな不幸な事故が続き、私達はどちらに向かうのでしょうか?

それではまた・・・・・






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